第1回目のコラムは、私のモノ作りに関する信念の一つと考えているテーマをとり上げました。
中国の家電メーカで日本企業の委託製造を受けている企業を訪問した際に、生産性向上と品質向上の両立に関して意見を求めたところ難しいという意見でした。「できる」と答えるとコストを下げてくれと言われることを懸念されたのかと思って、食事の席で両立はできますよと話を持ちかけましたが、できれば良いですねという回答でした(経営者の方の回答です)。 実際の製造現場・製造スタッフの方と話して、この会社では確かに難しいなと感じました。
定年退職して個人事業としてこの会社を立ちあげた後に、国内のある自動車部品メーカの支援をする機会がありました。同様に生産性と品質を一緒に改善することができますよと話をしましたが、中国メーカと同様の回答・対応でした。私は大変驚きました。自動車部品関連の事業をしている会社はトヨタさんに代表される生産改善の活動が定着しており私の意見に賛同していただけると思っていたからです。
日本の製造業は大丈夫なのかと心配になりました。
ここでは『生産性』と書きましたが、歩留まりの改善やロスの削減も含まれており、コスト削減も同時に図れます。
製造部門のコスト低減活動は、全員参加でかつ継続的な活動ですが、私が考える活動は工程設計・製法開発段階の活動を対象に考えています。
一例として、端子に電線を専用装置で圧着接続する作業を考えてみます。圧着接続部の引張試験を行って圧着強度を評価すると、同じ圧着装置を使っても、バラつきの多いラインと、バラつきの少ないラインが出てくるケースがあります。
バラつきの大きなラインでは、製品規格・社内規格に合格する条件で調整しているケースで発生しやすいです。
バラつきの少ないラインは、最も強度が出る条件まで条件を詰めて調整しているケースです。更に強度に影響する因子を調査して、その変動が実質上問題ない範囲になるように部品・装置を管理しています。
圧着する時間は、両方の装置で同じです。歩留が高いので品質は向上しています。また不良が少ないので生産性は高まります。両立が可能となっています。
もちろん製造工程で過剰な品質管理を行えば、その分コストが高くなり、検査作業も増え生産性は低下し、コストが上がってしましいます。
最も合理的な製法と条件設定、及び合理的な検査内容・管理範囲と生産性を考慮した検査手段の選定・開発が重要となります。それらは工程設計の範疇です。
私は生産性と品質を同時に改善する方法として、工程設計の見直しを提案しています。